2010年 04月 29日
最近立て続けに、統計確率に関する本を2冊読んだ。タイトルはうろ覚えだが、「コミュニケーションのためのリスクリテラシー」、「統計のウソ」だったか。どちらの本も、具体的な例が延々と書かれていて、いささか辟易としたのだが。いずれも、統計確率に関しては、人間の直感は当てにならないこと、そしてリスク概念を理解させるには具体的な対象を数値化して具体的に把握できるようにすること、が強調されていた。結局、なんと言ってもベイズの定理が直感的に理解できないということだ。これも0.000何とかのような確率ではなく、例えば1万人のうち何人がどうこうという自然頻度(と呼ぶらしい)で表現し、かつツリー表現で場合を分けてきちんと書きこめば、誰でも理解できるし間違いが少ないことが実験的に証明されていた。まったくの勘違いというか、とんでもない回答は激減するようだ。 その本の直感的に理解できない例として、あの有名なモンティ・ホール問題が出ていた。もちろん既に知っていたのだがそして今回もいろいろ考えたのだが、やはり直感的には納得いかない面がある。 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から。 3つのドアの内、当たりは1つ。1つのドアが外れとわかった場合、直感的には残り2枚の当たりの確率はそれぞれ1/2になるように思えるモンティ・ホール問題は、モンティ・ホール (Monty Hall、Maurice "Monty Hall" Halperin) がホストを務めるアメリカのゲームショー番組「Let's make a deal」の中で行われたあるゲームに由来する、次のような確率の問題である。この問題は「直感で正しいと思える解答と、論理的に正しい解答が異なる問題」の適例とされる。 「プレイヤーの前に3つのドアがあって、1つのドアの後ろには賞品の新車が、2つのドアの後ろにはヤギ(はずれを意味する)がいる。プレイヤーは新車のドアを当てると新車がもらえる。プレイヤーが1つのドアを選択した後、モンティが残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せる。 ここでプレイヤーは最初に選んだドアを、残っているまだ開けられていないドアに変更しても良いと言われる。プレイヤーはドアを変更すべきだろうか?」 1990年、ニュース雑誌の"Parade magazine" のコラムニスト、マリリン・ボス・サバント(自称では知能指数が200をはるかに超しているそうだ)が読者の質問に「正解は『ドアを変更する』である。なぜなら、ドアを変更した場合には賞品を当てる確率が2倍になるからだ」と回答したところ、読者から「彼女の解答は間違っている」との約一万通の投書が殺到した。投書には千人近い博士号保持者からのものも含まれていた。 事後確率あるいはベイズの定理や主観確率に関する問題で、詳しい説明を聞いてもなおかつ納得のできない、人間の頭の構造からして本質的に分かりにくい問題なのだろう。 色々な説明があるし、確かに答えは明らかなのだが。とにかく何度もシミュレーションすると1/3と2/3に綺麗に分かれるそうだ。また1対2でなく1対9とか大きな相違がある数値で考えると分かりやすいという考え方もあるそうだが、これは私には納得がいかなかった。もちろんベイズの定理で場合を分けて計算すればきちんと答えは出るのだが、これを自分で解くのは難しいし、人の書いてくれた回答を見てもう~~むとうなってしまうような分かり難い代物。で、私なりの解釈は… 一つのドアを指名した後で車がありえるケースは3種類で、本人の指名したドアはその一つのケースなので、なにをどうしても1/3しかあり得ない。要するに、場合の数をきちんと数えること。 一つのドアを指名した時点でその確率は1/3、残りの2つのドアはももちろん1/3づつ。しかし司会者が答えを知った上で(ここで条件が変わってしまった点がポイント)正解でないドアを開くので、その時点でそのドアの1/3の確率はそのまま残りのドアに引き継がれて、2/3になる。 まあ肝は、司会者が答えを知っているので、確率がそのまま残りに引き継がれる。知らなくてたまたまはずれを開けたのならば、直感的に感じる1/2づつの答えになるはず。 モンティ・ホール問題と類似するものに3人の囚人問題がある。 「ある監獄にA、B、Cという3人の政治犯がいて、それぞれ独房に入れられている。罪状はいずれも似たりよったりで、近々3人まとめて処刑される予定になっている。ところが恩赦が出て3人のうち1人だけ助かることになったという。誰が恩赦になるかは明かされておらず、それぞれの囚人が「私は助かるのか?」と聞いても看守は答えない。 囚人Aは一計を案じ、看守に向かってこう頼んだ。「私以外の2人のうち少なくとも1人は死刑になるはずだ。その者の名前が知りたい。私のことじゃないんだから教えてくれてもよいだろう?」すると看守は「Bは死刑になる」と教えてくれた。それを聞いた囚人Aは「これで助かる確率が1/3から1/2に上がった」とひそかに喜んだ。果たして囚人Aが喜んだのは正しいか?」 モンティ・ホール問題の「ドア」が3囚人問題における「囚人」、「当たりのドア」が「恩赦」に対応しており、等価な問題であることが分かる。したがって、このケースではBCの死刑確率は2/3で、看守の回答の前後で変化していないため、Bの死刑が確定した時点でAが恩赦になる確率は1/3のまま、Cの恩赦確率は2/3へと変化していることになる。 この問題も、モンティ・ホール問題と同じであり、看守が「Bは死刑になる」と答えた理由が重要である。仮に囚人Aが恩赦になる場合、看守が、死刑になるB、Cをどのような確率で選択するか、そして実際にどちらの名前を言うかによって、囚人Aの助かる確率は0から1/2まで変化する。B、Cをコイン投げ(1/2の確率)で選択したときに限って、囚人Aの助かる確率が1/3のままと変化しないことに留意すべきである。モンティ・ホール問題と異なるのは、看守がどのような回答をしたとしても、Aにはその回答を変える(AからCへと立場を変える)ことができないという点である。
by misterwhite
| 2010-04-29 15:01
| 科学技術
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